2030年での達成を目指すSDGs。ゴールを見据え、豊島区教育委員会が立ち上げた取り組みが「SDGs達成の担い手育成事業」です。SDGs達成のためにできることは何か。約2年にわたり、学校ごとにさまざまな角度から取り組みを進めてきました。

金子教育長 「大切なのは、これからの未来を担う子どもたちの豊かな心を育むこと。2021～2022年度には予算を設け、区立小中学校全30校に分配し、各校でどんな取り組みができるのか考えてもらいました」

教育部 教育施策推進担当課 後閑課長 「企業や大学、区民の方々などさまざまな主体を巻き込み、各校がユニークな取り組みを展開しています。例えば、豊成小学校では株式会社良品計画と協働し、防災やフードロスに関する授業を行いました。PTAによるフードドライブ活動にも力を入れています。また、朝日小学校は大正大学と連携し、校内の緑化活動を始めとする環境学習に取り組みました。千川中学校では地域消防団と協力し、中学生によるD級ポンプ（※）消火隊を組織。『自分たちの地域は自分たちで守る！』というスローガンの下、防災を体験的に学んでいます」

※D級ポンプとは
地域住民が使用できる小型の消火装置。1分間に130リットル以上放水でき、高い消火能力を持ちます。操作方法は易しく、取り扱いを覚えれば少人数での操作も可能です。地域の町会や自治会、消防団の倉庫、学校などに配置されています。

学校SDGs推進アドバイザー 阿部氏 「持続可能な開発のための教育（ESD：Education for Sustainable Development）が、こんなに早く区内の小中学校に浸透したことには驚きを隠せません。今後は各校の取り組みが子どもたちや地域に与えた影響を、客観的な指標をもとに評価してほしいですね。また、豊島区は先進的な『SDGs未来都市』として、国内の自治体に担い手育成の視点を示すことが重要です。ユネスコスクールなどに加盟し、世界各国の学校と交流することも提案したいです。地域と学校が密接に関わる、豊島区ならではのESDを全面に押し出してほしいと思います」

 
環境の観点からお話を聞かせてくれたのが、SDGs環境教育アドバイザーの桝野氏とSDGs環境学習リーダーの町田氏です。

SDGs環境教育アドバイザー 桝野氏 「千早小学校では、子どもたちだけでなく区民ひろばの方も活動に加わり、地域一体の取り組みを進めています。要小学校では、里山をイメージした植物を植えて『要の小径』を実現。目白小学校では名産である江戸東京野菜の『雑司ヶ谷なす』の地産地消を目指す取り組みを始めました」

SDGsの17ゴールの範囲は幅広く、何から手を付けるべきか悩む声も聞かれます。そこで子どもたちには、 “People（人間）, Prosperity（豊かさ）, Planet（地球）, Peace（平和）, Partnership（パートナーシップ）”の5つのPの枠組みで考えるようにおすすめしているのだとか。

SDGs環境学習リーダー 町田氏 「清和小学校で20年以上続く『ヤゴ救出大作戦』。この取り組みでは、プール掃除の前に子どもたちが網で水生昆虫をすくい、観察しています。水を貯めたプールはヤゴなどの水生昆虫にとって良いすみかですが、プール開き前の掃除で排水すると、その命を奪ってしまいます。当時は保護者という立場でしたが、生き物の命を守る取り組みとして、学校に声をかけ、子どもたちと保護者が参加して活動がスタートしました」


続く後篇では、豊島区が育んできた「担い手」たち、そして子どもたちの活動のこれからについてより深くお話します。